ミユダマ2018~夏の歌謡祭~
伊藤美裕さんが歌謡曲の夏フェスとして2013年に立ち上げたイベント『ミユダマ』の第6回が、東京・赤坂グラフィティで開かれました。
猛暑が戻り強い陽射しが照りつける赤坂の街。暑さにも負けず集まったファンは、60代が中心と思われる男女。昭和の歌謡曲で育った世代ですね。冒頭、「暑い中、今日は音楽で爽やかになっていただきたいと思います」と話した伊藤さん。ステージは大瀧詠一さんの「カナリア諸島にて」からスタートして、いきなり爽やか!と思ったら、続いて登場した川島ケイジさんは、かなり熱いパフォーマンス。長身181cmのイケメンには女性ファンが熱視線を送っていましたが、川島さんの2曲目「Stay Away」の曲調やギター・プレーにはラテンやアフロとファンクを融合させたカッコよさが感じられて、キザイア・ジョーンズを思い出しました。ギターの腕前もなかなかのようですが、歌声がまた心地よくて、これは女性のみならず引き込まれる魅力ありと実感。
玉置浩二さんの「メロディー」、井上陽水さんと安全地帯の「夏の終わりのハーモニー」といったバラードも披露されましたが、こちらもとても気持ちよくて、ハードとソフトのバランスが絶妙でした。
川島さんに続いてステージに上がったのは、ブレッド&バターの岩沢幸矢さん。カラフルなアロハを着た姿は、おしゃれなお爺ちゃんといった感じで、現在75歳だそうですから、実際におじいちゃんと呼ばれることがあってもおかしくない年齢ですが、その歌と、そこから漂わせる空気の爽やかなこと。1曲目の「夕焼けのない町」から、湘南の風をそのまま赤坂へ運んできたようでした。3曲目にはスティービー・ワンダーの代表曲「I Just Called To Say I Love You(心の愛)」を美裕さんと歌いましたが、この曲、元々はスティービーがブレバタのために書いたものだったそう。岩沢さんたちがかつてイギリスでレコーディングした際に初対面して意気投合し、親交を深めたことから、曲の提供を受け、詞を呉田軽穂 (松任谷由実)さんが書いて、細野晴臣さんがアレンジしたそうですが、発表前にスティービーから「やっぱり自分で歌う」と連絡が入り、発売されるとビルボード1位を記録する大ヒット。ブレバタ盤はその後に「特別な気持ちで」というタイトルでリリースされましたが、今日まで知る人ぞ知る存在だったようです。
それにしても心身ともに健康的な印象の岩沢さん。文化が人をつくるんだなぁ…と改めて感じました。
そして、岩沢さんに替わって登場した伊藤さんは山口百恵さんの「喪服さがし」から自分のコーナーをスタート。ここからティン・パン・アレーの「ソバカスのある少女」までの7曲は、まさに彼女がテーマにした「音楽で爽やか」にぴったりの選曲で、その歌謡曲マニアぶりとセンスの良さが窺えました。この人の声は強い個性や圧倒的な迫力を感じさせない分、どんな歌でも合いそうで、さらにさらにその声でその表現で歌謡曲の名作傑作を聴かせてほしいと思いました。
伊藤さんとバンド・メンバーがステージを下りると同時にアンコールが起きて、それに応えて披露されたのは「蘇州夜曲」。夏の暑さを避けて引きこもっていた時に中国の歴史漫画50巻を読破したそうで、「蘇州夜曲」が選ばれたのは、中国つながりだそう。この辺の自由な感じ、伊藤美裕という人の大きな魅力だと思います。
※左手の飲み物は、この日のスペシャル・ドリンク"平成最後の夏"
最後は全員ではっぴいえんどの「風をあつめて」を歌って終了。もちろん冷房の効果もありますが、会場には爽やかな風を集めたかのような空気が広がって、外へ出ると再び大変な暑さに包まれたものですから、「ミユダマは都会の避暑地だったんだなぁ…」などとしみじみ感じながら、帰りの駅へと向かったのでした。
◆ 曲 目
伊藤美裕
カナリア諸島にて
川島ケイジ
All are
メロディー
夜の向こう側
夏の終わりのハーモニー (with 伊藤美裕)
夕焼けのない町
リトルジョージ
I Just Called To Say I Love You (with 伊藤美裕)
I don't want talk about it
Pink Shadow
マリエ
伊藤美裕
喪服さがし
私自身
Midnight Love Call
中央フリーウェイ
ろっかまいべいびい
君をのせて
ソバカスのある少女
アンコール
伊藤美裕
蘇州夜曲
全員
風をあつめて