『演歌道五十年 渥美二郎 Dinner Show ~初めてライブハウスで逢いましょう~』
昨日、東京のミュージックレストラン、ラドンナ原宿で開かれた渥美二郎さんの『演歌道五十年 渥美二郎 Dinner Show ~初めてライブハウスで逢いましょう~』を観てきました。
渥美さんがライブハウスに出演するのはこれが初めて。天気は生憎の雨でしたが、どんな内容になるのか楽しみな気持ちで出掛けました。
開演の約1時間前に着いて、まず食事。ビールを飲みながら、シャルキュトゥリの盛り合わせ、真鯛のポワレ 海藻バターソース、玄米パン、マンゴームースケーキ フランボワーズクーリソースをいただきました。
会場やイベントの性格のためか、浅草公会堂などで見掛けるよりオシャレ度の高いファンが多い印象。
そんな中、18時になるとピアノ、ドラムス、コーラスなど7名の演奏陣が現れ、メロディーが流れる中、渥美二郎さんが登場して最初の曲が始まりました。
アップテンポなポップスで初めて耳にする曲。いきなりの意表をつく展開に、その後への期待がさらに膨らみました。自らもギターを抱え、その腕前も披露した渥美さんのMCにより、それが最近、渥美さん自身が見つけて気に入ったシンガー・ソングライター、岩渕まことさんの「永遠鉄道」という曲であることがわかりました。
そして、「原宿で歌うので、ちょっとムードのある曲を集めてみました」とのことで、その後にはオリジナルの「哀愁」「霧の港町」が続きます。いわゆる演歌歌手として知られる渥美さんのイメージとは違ったステージになっていて、とても新鮮な印象でした。
ひと口に“演歌歌手”と言っても、個性は様々でとてもひと括りにできるものではありませんが、その特徴とされるコブシを渥美さんは多用せず、また唸ることもありません。特にこのライブの前半に歌われた“ちょっとムードのある曲”を続けて聴くと、渥美さんは演歌と言うよリ、藤山一郎さんに代表されるクルーナー歌手のひとりと言った方が相応しいように思えてきます。
「夜霧のしのび逢い」では再びギターを奏でる渥美さんでしたが、その甘い音色はロス・インディオス・タバハラスあたりを思い出させるようなもので、歌だけでなく演奏でもうっとりとした気分にさせてもらいました。
誠実な人柄が窺われるトークを交えながら「恋心」「ラブユー東京」「夜霧よ今夜も有難う」などが歌われましたが、何を聴いても感じられるのは清潔感。それは過度な感情表現を抑えることで生まれる、渥美さんの歌の特色と言えますが、抑えていながら却って深く沁み込むように伝わってくるものがあるのは、天性の資質と十代の頃から演歌師として歌い、重ねてきた豊かな経験のためでしょう。
途中、特に印象的だったのは「黒い花びら」。この曲の時だけ、声の出し方が違って感じられたのです。大きさや強さではなく、発し方とでも言うような。
この作品が、日本作曲家協会の古賀政男さんや服部良一さんが、世界に通じる新しい歌を育成することを目的に起ち上げた日本レコード大賞の第1回大賞受賞曲だったことを考えると、その表現の違いには、少年時代の渥美さんが「黒い花びら」に受けた衝撃のようなものが作用しているのでは…?などと思えました。このあたり、機会があったらご本人に訊いてみたいと思います。
後半に入ると「傷だらけの人生」に続き「奥の細道」をはじめとする自身のヒット曲へ移っていきましたが、「傷だらけの人生」と渥美さんの相性の好さは見事なもので、さらに、この歌をヒットさせた鶴田浩二さんもまた人としての清潔さを感じさせる人だったと、お二人に共通するものを見た想いがしました。
渥美さんにとって初めてのライブは最新シングル「涙色のタンゴ」で終わりましたが、渥美さん自身とても楽しめたようで、「親戚で宴会をやっているような、こういう雰囲気もいいですね」と話し、またやってみたいという意志を示されていました。
会場には「涙色のタンゴ」を競作しているよしかわちなつさん、叶やよいさんも姿を見せていた中、最後にはアンコールが起きて、渥美さんはやはり来場していた岩渕さんをステージに招き、二人でこの日2度めの「永遠鉄道」。
実に楽しく、心地よいひと時に、帰り道の雨さえ爽やかに感じられる夜となりました。
◆ 曲 目
永遠鉄道
哀愁
霧の港町
夜霧のしのび逢い
恋心
知りすぎたのね
ラブユー東京
たそがれの銀座
夜霧よ今夜も有難う
粋な別れ
黒い花びら
傷だらけの人生
夢追い酒
忘れてほしい
他人酒
釜山港へ帰れ
涙色のタンゴ
アンコール
永遠鉄道