歌謡亭日乗

或る音楽ライターの仕事と日常

渚ようこさんが急逝

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▲ 2004年発表のアルバム『渚ゆうこ meets 阿久悠 ふるえて眠る子守唄』


 渚ようこさんが9月28日に心不全のため、都内の病院で亡くなりました。
 24日に『クレイジーケンバンドデビュー20周年アニバーサリーライブ』に出演したばかりで、11月30日には恒例となっている『渚ようこリサイタル』を控えた中での急逝でした。

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▲ 11月に予定されていた『渚ようこリサイタル・2018ようこズンドコ歌謡流れ旅』のポスター。独特の濃厚な香りが溢れます


 派手な印象はなかったけれど、その存在感には深いものがあり、まだまだ歌謡界のためにも活躍してほしかった人なので、とても残念です。

 いわゆる文化というものには、主流と傍流があり、両方が存在するからこそ豊かさや拡がり、奥深さというものを加えていくのだと思います。

 1994年に本格的な活動を始めて以降の渚さんは、決して主流になることはありませんでしたが、主流とともに平成の歌謡文化を形成する重要な一アーティストであったことは確かでしょう。

 ライブ・ステージの独特な雰囲気は、ちあきなおみさんが持つ危うさに似た稀有なもので、それを想うとこの度の逝去が大変に惜しまれます。

 朝ではなく夜のような、光ではなく影のような、青空ではなく雨空のような、笑顔ではなく泣き顔のような…、人が隠してしまいがちな感情や表情に敢えて目を向け、そこに人生の機微を見つけては歌うような表現が好きでした。

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▲ こちらは昨年のリサイタルのポスター。渚さんが育んだ文化が凝縮されているのを感じます


 渚さんはこの世を去っても、彼女が創り育んできた文化は継承されていってほしいものだと心から願いつつ、ご冥福をお祈りします。